「商圏分析」と「エリアマーケティング」は、しばしば同じ意味で使われますが、厳密には役割が少し異なります。商圏分析は、特定の店舗や拠点を中心に、そこへ来店・利用する可能性がある範囲(商圏)を定義し、その内側の世帯構成や人口特性を把握する作業です。一方エリアマーケティングは、その分析結果をもとに、どのエリアへ、どのような手段で、どのようなメッセージを届けるかという販促の設計まで含んだ、より広い概念です。つまり商圏分析はエリアマーケティングの土台であり、エリアマーケティングは商圏分析の「その先」にあたります。
この違いを意識せずに検索すると、商圏分析のやり方やツールの説明で止まってしまう記事に多く出会います。それ自体は有用な情報ですが、実務で本当に知りたいのは「分析した結果、具体的に何をすればよいのか」という一歩先のことではないでしょうか。本記事を含む一連の記事では、分析の考え方を押さえたうえで、それを実際の販促施策の選定・実施にどうつなげるかまでを扱います。
商圏分析だけを行って終わってしまうケースは少なくありません。世帯数や年齢構成を調べ、レポートにまとめたところで満足してしまい、その後の施策選定が感覚的な判断に戻ってしまう、という状態です。これでは分析にかけた手間が十分に活きません。
本来、商圏分析は「このエリアにはどんな世帯が、どれくらいいるか」を明らかにする作業であり、その先には「では、この特性を持つエリアには、どの販促手段が合うのか」という問いが続きます。たとえば単身世帯が多いエリアと、子育て世帯が多いエリアでは、同じ商材でも反応しやすい訴求や届け方が変わってきます。分析の結果を、具体的な施策の選び方にまで接続して初めて、商圏分析は意味を持つといえます。
商圏分析で確認する指標にはいくつかの代表的なものがあります。それぞれの指標が何を表し、どの販促施策と関係が深いかを整理すると、以下の表のようになります。
| 指標 | 読み取れること | 関係する施策 | 公開粒度 |
|---|---|---|---|
| 世帯数 | エリア内にどれだけの世帯が存在するか(母数) | ポスティング | 市区町村単位 |
| 単身世帯率 | 単身層の比率が高いか、ファミリー層が中心か | 街頭配布・サンプリング、ジオターゲティング | 市区町村単位 |
| 持家率 | 定住性の高さ、紙メディアとの接触傾向 | 新聞折込、ダイレクトメール | 市区町村単位 |
| 年齢構成 | シニア層・現役世代・若年層の比率 | 新聞折込(シニア層)、街頭配布・サンプリング(若年層) | 市区町村単位 |
| 昼夜間人口比 | 住宅地かオフィス街か、日中の人口の動き | オフィスポスダイレクト、ジオターゲティング、街頭配布・サンプリング | 市区町村単位 |
| 平均年収 | エリアの所得水準 | ダイレクトメール、プレミアムセグメントDM | 市区町村単位 |
(読み方: 「読み取れること」でエリアの性格をつかみ、「関係する施策」で自社が検討すべき手段の候補を絞り込む、という順序で使う表です。当社ではこれらの指標を市区町村単位で公開しており、まずはこの粒度で方向性をつかむことができます。)
世帯数はもっとも基本的な指標で、そもそもそのエリアにどれだけの母数があるかを示します。単身世帯率と年齢構成は、届けるメッセージの内容を左右します。持家率は、紙媒体との接触傾向や定住性の目安になります。昼夜間人口比は、住宅地なのかオフィス街なのかという土地の性格を表し、事業所向けの施策を検討する際の判断材料になります。平均年収は、商材の価格帯やターゲット層の絞り込みに関わってきます。
これらの指標は単独で判断材料になるというより、組み合わせて見ることで初めてエリアの性格が立体的に見えてきます。たとえば「単身世帯率が高く、昼夜間人口比も高い」エリアであれば、オフィス街に近い住宅地という性格が推測でき、日中と夜間で異なる施策を組み合わせる余地が見えてきます。
商圏分析からエリアマーケティングの実施まで、一般的には次の5つの段階を踏みます。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| 1. 目的設定 | 何のために分析するか(新規出店・既存顧客の深掘り・販促エリアの選定など)を明確にする |
| 2. 商圏設定 | どの範囲を分析対象とするか(距離・時間・実際の来店実績など)を決める |
| 3. データ収集 | 世帯数・年齢構成・所得水準などの指標を集める |
| 4. 分析 | 集めたデータからエリアの特性を読み解き、ターゲットとの適合度を検討する |
| 5. 実施・検証 | 分析結果にもとづいて施策を選び、実施したうえで反響を確認する |
(読み方: 多くのつまずきは1と2の曖昧さから生じます。目的と商圏の範囲が定まっていないと、集めたデータをどう読めばよいか判断できません。)
このステップのうち、ステップ3・4(データ収集・分析)については専門的な解説記事やツールが数多く存在します。一方で、ステップ5(実施・検証)まで具体的に踏み込んだ情報は、意外と多くありません。当社が扱えるのはまさにこのステップ5の部分で、市区町村単位の商圏データと、それぞれの施策との相性評価を、エリアページ上で確認いただけます。
商圏分析やエリアマーケティングという言葉で検索すると、分析の手法やツールの紹介にとどまる情報が中心になりがちです。もちろん分析の考え方を理解することは重要な出発点ですが、実務で成果につながるのは、その分析結果を具体的な施策の選定・実施に落とし込んでからです。
当社では、全国250都市以上・400エリア以上の商圏データを市区町村単位で公開し、それぞれのエリアで11の販促施策との相性を評価しています。エリアの特性を確認したうえで、どの施策が向いているかを検討する材料としてご活用いただけます。また、公開しているのは市区町村単位のデータですが、実際の案件では町丁目など、より小さな単位で分析し、配布エリアや対象を絞り込んでいくことも可能です。市区町村単位の公開データで大きな方向性をつかみ、実務ではさらに細かい単位で検討を進める、という二段階の考え方です。
次の記事では、商圏分析の具体的なやり方(目的の決め方からデータの読み方まで)を扱います。また、施策の選び方や組み合わせ方については「エリアマーケティングの手法」で、市区町村単位のデータをより細かい単位につなげる考え方については「市区町村単位のデータから町丁目へ」で、それぞれ詳しく紹介しています。
施策ごとの効果の読み解き方は「ポスティングの効果はどう決まるか」「DMの反応率はどう決まるか」の各特集もあわせてご覧ください。
商圏分析は、特定の拠点を中心にした商圏内の世帯構成や人口特性を把握する作業です。エリアマーケティングは、その分析結果をもとにどのエリアへどの手段で何を届けるかまで含めた、より広い概念です。商圏分析はエリアマーケティングの土台にあたります。
世帯数・単身世帯率・持家率・年齢構成・昼夜間人口比・平均年収などが代表的な指標です。それぞれの指標がどの販促施策と関係が深いかを踏まえて確認すると、施策選定につなげやすくなります。
分析だけで終わらせず、目的設定・商圏設定・データ収集・分析・実施検証という5ステップの最後まで進めることが重要です。当社では市区町村単位の商圏データと11施策の相性評価を公開しており、実施段階の検討材料としてご活用いただけます。